体内時計
あらゆる生物は体内時計を持っているといわれています。では、昆虫の体内時計はどこにあるのでしょう。不完全変態の昆虫は幼虫の時から複眼と視葉をもっており、この視葉に時計機能があることがわかっています。一方、サナギから成虫になる段階で複眼や視葉が形成される完全変態の昆虫では、幼虫段階も体内時計は働いており、脳に相当する神経節に時計機能があるようです。
脊椎動物では、脳にある松果体が周期的にメラトニンというホルモンを分泌することで、一日のリズムをつくりだしていますが、哺乳類以外ではこの松果体に時計機能もあり、光受容器を持っていてズレの調整を行っています。
一方、哺乳類の松果体はメラトニンを分泌する能力だけであり、体温の調節やホルモンの分泌調節といった体の生理機能をコントロールしている視床下部の、眼からの視神経が交叉する部分の真上にある一対の視交叉上核と呼ばれる神経細胞が、昼行性と夜行性とに関係なく昼にピークをもつ電気活動リズムを刻んでいて、網膜からの明暗信号によってズレの調整を行っています。
また、ある種の爬虫類や鳥類では松果体と合わせて視床下部でも一日のリズムをつくっていることや網膜からの光情報も重ねて時計機能が働いているようです。
さらに、昆虫は一日のリズムをつくりだすだけでなく、日長によって季節の変化を知ることができることや、脊椎動物の中には、一年の長さを測る概年時計を持っているものがあることも確認されています。
鳥の渡りの仕組み
鳥類の場合は地球磁場を検知していると考えられていますが、どこに磁気コンパスがあるかは謎のままです。
どちらが北かという方位感覚だけではなく、赤道からどのくらいの位置にあるかも認知できているようで、これは磁線の角度を感知できているからだとされています。
鳥の磁気コンパスは環境における光に影響を受け、光のうち、緑色から青色光下では正常な渡りが行えても、黄色や赤色光下では行えなくなるようです。
最近の説として、鳥の目の中にある青色光受容器のクリプトクロムというタンパク質が、活性酸素の一種であるスーパーオキシドと結びついて生じる電子対が、地球磁場の影響を受けた回転をすることで、視覚神経細胞を伝わる信号の流れが変わる現象が、コンパスの働きをしているのではないかという説があるようです。
ヘビの赤外線受容器
ある種のヘビには、目と鼻の間にピット器官と呼ばれるものがあります。赤外線がこのくぼみ状のピット器官内に入り込むと、ピット器官の中にある、非常に薄い皮膜の温度が上がります。
この熱感知に関与する神経経路は、視覚よりも触覚に近いもので、ほ乳類が痛みを感知する受容体と同系統のものだそうです。
動物の光受容器を通した視覚能力を調べてみましたが、自然界には人間が見る世界とは違った見方をしている動物がいるということであり、自然にとっては人間の常識は必ずしも常識ではないということだと思います。
人間は画像情報と言語情報を中心にした生活を営んでいますが、動物の嗅覚情報に依存した営みについて、植物との関係も含めて調べてみたいですね。人間も自然に対してもっと謙虚でなければならないということをより強く感じられることでしょう。