今年の活動を振り返って

今年もクリスマスが過ぎ、後1週間もしないうちに新年を迎えます。そこで、今年1年の三ツ峠ネットワークの活動を振り返ってみたいと思います。
若葉が薫るゴールデンウィークの頃、三ツ峠山頂近くの林のヒロハツリバナが、動物の採食によって皮剥ぎ状態になっているのが発見され、ニホンジカが進出してきたのかと懸念されました。そこで、センサーカメラをしかけておいたところ、若い雌ジカが写っていたことから、いよいよ三ツ峠山でもニホンジカの問題が現実になるのかと心配されました。
しかし、木々の新芽や野草など餌となるものが山麓にあるからなのか、6月になってアツモリソウ保護活動で人の出入りがあるのでシカも近づくのを避けていたのか、山頂付近でのシカの採食活動を見かけなかったことから、いったんそのままになっていました。
ところが、アツモリソウの花期が終わり、オオバギボウシが花をつける頃になって、オオバギボウシの群生地に花が全く見られない場所があるのに気付きました。さらに、8月になるとオオバギボウシの葉が一面食い荒らされているなど、ニホンジカが群れで入り込んできている様相を呈するようになりました。
三ツ峠山のアツモリソウ保護・監視活動をしている三ツ峠山荘の中村光吉さんから、環境省富士五湖自然保護官事務所や山梨県森林環境部みどり自然課へ、三ツ峠山のアツモリソウ生息地がシカによる採食影響の深刻な事態にあることを報告する一方、防鹿柵設置対策について検討を行いました。また、アツモリソウ生息地にセンサーカメラを設置したところ、夜間採食行為をしている写真が撮れました。
環境省の迅速な対応により防鹿柵設置事業が計画され、環境省から日本高山植物保護協会に設置作業が委託されたことで、三ツ峠ネットワークのメンバーも設置作業のお手伝いをさせてもらう運びとなりましたが、ボランティアを募集しての柵設置作業過の様子などは過去記事に掲載してありますので割愛します。
なお、三ツ峠ネットワークのメンバーでもあり写真家ジャーナリストの新井和也氏が、「山と渓谷」の2011年1月号に、「シカによる生物多様性の危機」というレポート記事を執筆されていますが、「南アルプスに見る被害と対策の現在」と併せて「三ツ峠のアツモリソウの危機」についても記載していますので、ご覧になってみてください。
今年1年、ニホンジカの食害対策に追われたようにも思いますが、これは今年新たに生じた問題で、従来のアツモリソウ生育地がササやテンニンソウ、ヤマドリゼンマイといったアツモリソウにとっての脅威植物がはびこるのを食い止めるための除去作業や、遮光障害を起こしているカラマツの下枝の除伐作業などにも、多くの人たちがボランティアで参加してくれました。
三ツ峠山の一つのピークである御巣鷹山の山頂に施設のある東京電力の大月支所の皆さんは、7月末の暑い最中にもかかわらず、ご家族連れで大勢来てくれました。

三ツ峠ネットワークの活動にご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。アツモリソウ生育地の植生保全活動も、そして今年からはじまったシカ対策活動も、来年以降も続きますので引き続きご支援・ご協力をお願いします。

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